アメリカの通販会社、シアーズ・ローバック(Sears, Roebuck and Co.)の総合通販カタログの1928-29年秋冬号フィラデルフィア版です。表紙と裏表紙の裏側を含めると、1106ページあります。シアーズ・ローバックは地域ごとに一部内容が異なるカタログを発行していて、他にシカゴ版、カンザスシティ版、ダラス版等がありました。 1900年代から1920年代のシアーズ・ローバックのカタログは、復刻版がいくつか出版されていますが、これはオリジナルです。表紙と裏表紙の隅に汚れと水染みがあり、1020ページ辺りから裏表紙までページの上の角が折れていますが、全体のコンディションは90年以上前の物としては極めて良好です。 巻頭が女性ファッションなのは現代の総合通販カタログと同じです。女性のファッションは第一次世界大戦後に大きく変化しました。1920年代はフラッパーと呼ばれる女性が街を闊歩した時代で、ドレスやスカート、コートの丈が短くなり、ブーツが履かれなくなって、女性が足を見せるようになりました。また、パーマをかけたショートヘアに釣鐘型の帽子を被るのが流行しました。 1910年代のカタログと見比べると、婦人用帽子のページでは1910年代は様々なデザインの帽子が掲載されていましたが、1920年代はフラッパーが被る釣鐘型や深くすっぽり被るデザインの帽子ばかりになっています。婦人靴のページでは1910年代はブーツが多数掲載されていましたが、1920年代は秋冬号にもかかわらず、おしゃれ用のブーツは姿を消し、アウトドア活動用や防寒用等、実用的なブーツしか掲載されていません。 1920年代は自動車が主な移動手段になり、1910年代のカタログと比べるとカー用品の扱いが増えた一方、馬車・馬具の扱いは減っています。1910年代には無かった電気掃除機、電気アイロン、トースター等、家電製品が掲載されています。ほとんど白黒ページですが、一部カラーページがあります。ほとんどの商品はイラストで描かれていますが、一部写真が使われています。1910年代のカタログと比べるとページ数が減っていますが、一般家庭で使われるあらゆる品物が掲載されています。ただの古いカタログではなく、当時のファッションや暮らしぶり、物価を知ることができる歴史資料です。